労働生産性の式から見えてくる価格戦略の重要性

持続的な賃上げには労働生産性の向上が不可欠だと言われていますが、具体的に何を意味し、どのような戦略を取るべきなのでしょうか。その答えの一つが価格戦略(プライシング)にあります。

1.労働生産性の基本

労働生産性は次の式で表されます
 労働生産性 = 付加価値 / 労働時間
つまり、生産性を向上させるためには、労働時間を削減するか、付加価値を増やす必要があります。

2.労働時間の削減の限界

日本の労働生産性は過去30年間微増し続けていますが、その主な理由は労働時間の短縮です。デフレの中で、企業は残業を減らし、時短勤務を進めてきました。しかし、この方法も限界に達しています。もはや労働時間を削ることで生産性を向上させる余地はほとんど残っていません。

3.付加価値の増加とコスト削減の限界

労働生産性を向上させるもう一つの方法は付加価値の増加です。付加価値は売上高から外部購入費用を差し引いた値です。つまり、コストを削減することで付加価値を高めることができます。しかし、この方法も限界に達しています。デフレの30年間で企業は徹底的にコストを削減してきたため、これ以上の削減は難しいのです。

4.値付けの最適化が最も重要

コスト削減が限界に達した今、次に考えるべきは売上の増加です。しかし、日本は少子高齢化の影響で市場規模の拡大が難しい状況にあります。人口減少の中で単純に販売数量を増やすのは難しくなっており、物量を追う成長戦略は通用しません。

そこで重要なのが販売単価の引き上げです。適正な価格を設定し、付加価値に見合った価格を確保することが、労働生産性向上のカギとなります。

5.価格戦略の重要性

日本企業はこれまで「価格を据え置くことで市場競争に勝つ」という戦略を取ってきましたが、これでは利益が増えず、賃上げの原資も生まれません。今こそ、適正な価格設定(プライシング)を戦略の中心に据えるべきです。

以下のポイントが重要になります。
・商品、サービスの価値を最大化する(品質・ブランド価値・独自性を高める)
・価格を上げても顧客が納得する戦略を設計する(価格改定の理由を明確に伝える)
・安さで競争せず、価値で競争する意識を持つ

6.まとめ

これまで日本企業は「コスト削減」と「労働時間の短縮」で労働生産性を向上させようとしてきましたが、その手法は限界に達しています。これからの時代、持続的な賃上げを実現し、企業が成長するためには価格戦略(プライシング)の最適化が不可欠です。

単なる値上げではなく、適切な価格設定と付加価値の向上により、企業の利益率を改善し、その結果として賃上げや新たな成長投資が可能になることが重要です。

「安さの競争」から「価値の競争」へ。日本企業には、この意識改革が求められています。

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