中小企業の成長戦略:経済学的視点から見た労働生産性の重要性

◇現状の日本の経済政策

日本は金融政策で金利を抑え、財政政策で国民所得を増やそうとしています。しかし、国民所得の増加は期待ほどではありません。これは、積極的な財政政策と増税が同時に行われ、消費が抑制されているからという見方もできます。

◇減税の問題

減税を行い、国債を発行して政府支出を賄うという提案もあります。しかし、社会保障費が増大する日本においては、国債の増発は他国とのマネタリーベース比(通貨供給比率)の増大につながり、急激な円安を助長する可能性があります。

また、減税後に将来の増税が見込まれる中では、消費は一時的にしか増えないと考えられます。これはライフサイクル仮説と言う理論で説明ができます。

◇解決策は労働生産性の改善

そこで労働生産性の改善が有効だと考えられます。

経済学の分析手法IS-LM分析やAD-AS分析を用いて、労働生産性の向上がどのように経済全体に影響を与えるかを簡単に見てみましょう。

労働生産性を改善することで、IS-LM分析においてIS曲線が右にシフトし、国民所得を増加させることが可能です。これは、異次元の金融緩和を続け金利が非常に低く、金融政策が効力を失う可能性がある状況(流動性の罠)でも有効です。


さらに、現在の日本は完全雇用に近い状態にあります。IS-LM分析にさらに物価を加味したAD-AS分析に基づくと、完全雇用の状態では財政政策は物価のみを上昇させ国民所得は増えません。現状の日本はまだこの状態に陥ってはいませんが将来完全雇用が続くと財政政策が無効になりかねません。この場合もやはり労働生産性の改善でAS曲線を右シフトさせ物価を抑えながら国民所得を増加させる手法が有効となります。

以上の事から経済学の視点で見ても労働生産性の改善は非常に有効な経済対策といえます。

※IS-LM分析…財市場と貨幣市場の均衡を考えるものです。IS曲線は、投資と貯蓄が等しいときの利子率と国民所得の関係を表し、LM曲線は、貨幣需要と貨幣供給が等しいときの利子率と国民所得の関係を表します。

※AD-AS分析…財市場、貨幣市場、労働市場の一般均衡を説明することができます。AD曲線(総需要曲線)は、ある物価水準における国民所得の組み合わせを表し、AS曲線(総供給曲線)は、ある国民所得における物価水準の組み合わせを表します。

◇まとめ

日本のような高齢化が進み、労働力人口が減少している国では、生産性の向上は経済成長を維持するために不可欠です。また、完全雇用に近い状態では、財政政策よりも生産性の向上が国民所得を増加させるためのより効果的な手段となります。

しかし、生産性向上を図るためには、教育や研究開発への投資、労働市場の柔軟性の確保、企業のイノベーションを促進する政策など、多面的なアプローチが必要です。これらの施策は、短期的な経済刺激策とは異なり、長期的な視点での取り組みを必要とします。

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