破壊的イノベーションの覇者になろう!起業家が知っておくべき「破壊的イノベーション」教えます

 「イノベーションなんて起こそうと思って起きるもんじゃない。理論じゃない実践だ」って声がどこぞの社長さんから聞こえてきそうな表題ですがイノベーションについてのメカニズムを知っていれば手探りで経営を行うよりはるかに有益です。破壊的イノベーションはある日突然やってきます。そしていつの間にか会社は倒産の危機に陥った…という事にならないように今回はこの恐ろしい破壊的イノベーションについてできるだけわかりやすく解説してみました。

目次

破壊的イノベーションとは何か

 イノベーションという言葉はよく聞きますが、そもそもイノベーションとはなんなのでしょうか。イノベーションを直訳すると技術革新のことで新しいアイデアから社会的意義のある価値を創造することです。
 イノベーションには2通りに分類できて持続的イノベーションと今回の表題にある破壊的イノベーションがあります。持続的イノベーションは、既存の技術・製品に改良を重ねることで磨きをかけて市場価値を高めていくことです。一方、破壊的イノベーションは全く新しい技術や製品・サービス・ビジネスモデルでこれまでにない市場を開拓していくことです。
 わかりやすくデジカメで例えるならば、持続的イノベーションというのはより性能のいいデジカメの新商品が出ました程度の事ですが破壊的イノベーションはカメラ付携帯電話の登場程の違いがあります。カメラ付携帯電話の登場でその後のデジカメ業界がどうなったかは言うまでもありません。
 さらに細かく分類すると破壊的イノベーションにはローエンド型破壊的イノベーションと新市場型破壊的イノベーションの2つに分類できます。ローエンド型はこれまで持続的イノベーションを繰り返すことで過剰なスペックで高価格化した商品に対してシンプルで低価格な商品で対抗し市場のシェアを獲得することを言います。新市場型は新しい技術をこれまでの商品と掛け合わせ全く新しい価値を提供し市場を開拓することを言います。カメラ付携帯電話もデジカメ業界からすると新市場型破壊的イノベーションを起こされ衰退したといえるでしょう。

破壊的イノベーションの必要性

 企業はライバルに打ち勝つため持続的イノベーションを繰り返し自社の技術・製品を向上させ続けようとします。しかし持続的イノベーションは繰り返していくうちに市場が過剰供給状態に陥り限界を迎えます。消費者が性能に十分満足している状態なのに企業同士が互いに競争しより高性能なものを供給します。結果価格もより高価になっていきます。「4Kテレビ造りました。うちは8Kです。いやうちは12Kです。」消費者からみるともう4Kでも十分綺麗ですし、わざわざ高い金払ってまで8K,12Kを求めるのかという事です。
 その打開策が破壊的イノベーションという事になります。ローエンド型破壊的イノベーションの観点でみてみると、消費者はテレビを見るだけだから画質はそこそこでとにかくめちゃくちゃ安いモデルをつくって売ろうという発想になります。一方新市場型破壊的イノベーションの観点でみるとテレビというモノを使って何ができるのかを考えようという発想になります。
 いずれの場合もテレビの画質はもはやどうでもよくなってしまいます。
 このように破壊的イノベーションは大企業にとっては過剰供給状態の市場に活路を見出すための打開策にもなり、スタートアップにとっても全く新しい発想で新たな市場に参入できるチャンスにもなりえるのです。

破壊的イノベーションの実例とこれから

 破壊的イノベーションの例を一つ上げるならアップルのiPhoneの登場が思いつくでしょう。iPhoneの登場は衝撃的でした。それまで携帯電話の技術やサービスで世界をリードしていた日本メーカーのガラケーはiPhoneによって全滅させられました。iPhoneの何が破壊的だったか、それはキャリアフリーだったからです。これまでのガラケーはドコモ、au、ソフトバンクの3大キャリアの独自のサービスをユーザーは利用していました。メーカーも3大キャリアの仕様に沿って機種を開発していました。しかしiPhoneはキャリアフリーです。パソコンと同じようにユーザーが任意のアプリをダウンロードし様々なサービスを受けることができるようになりました。iPhoneを利用した多彩なSNSも登場し全世界とつながることもできるようになりました。
 どんなに改良改善を続け他社より優れたプロダクト(商品等)を世の中に提供してもこのようなアーキテクチャ(社会・産業構造)を丸ごと変えられてしまう破壊的イノベーションが一度起こるとプロダクト(商品等)の善し悪しは全く通用しなくなる世界になります。

 破壊的イノベーションの例
◇カメラ付携帯電話でデジカメ業界崩壊…新市場型破壊的イノベーション
◇iPhoneでガラケー崩壊…新市場型破壊的イノベーション
◇アジア製白物家電で日本製白物家電崩壊…ローエンド型破壊的イノベーション

 これら破壊的イノベーションに昨今はデジタル化が加わりイノベーションの波がより速くより複雑化していくと考えられます。デジタル化を伴う破壊的イノベーションはプロダクト(商品等)の概念を変え“モノ”に価値はなくなります。その“モノ”でどういうサービスを提供できるかに主軸が移りつつあります。デジタル化で“モノ“のアーキテクチャ(社会・産業構造)チェンジが起ころうとしています。そういう意味でデジタルの時代はローエンド型破壊的イノベーションより新市場型破壊的イノベーションが主流になってくると考えられます。

大企業ほど対処できない、それが破壊的イノベーション

 破壊的イノベーションは起こされても初めは気づきません。途中から気づくのです。実はiPhoneの登場もこんなモノあれば便利だよねという風にモノという単位ではわかっていましたがアーキテクチャ(社会・産業構造)が変わることは予測していませんでした。もしかすると途中から気づいたがどうすることもできなかったのかもしれません。なぜそういうことが起きるのか?
 当時日本勢は3大キャリアもメーカーもガラケーで成功していたためガラケー需要という既存の顧客を無視できません。ライバルに勝っていくために各社はキャリアのサービスやガラケーの性能に磨きをかけ持続的イノベーションに投資し続けるしかありませんでした。不確定要素が大きい別の需要には投資したがりません。そしてiPhoneが登場しますがiPhone登場初期はデバイスとしては色々問題もあり、技術的にもまだ日本メーカーが優れていました。そのうちiPhoneは様々な改良改善を加えキャリアフリーのメリットが発揮されるとガラケーは瞬く間に駆逐されてしまったのです。まさかアーキテクチャ(社会・産業構造)が変わってしまうとは思いもしていなかったでしょう。もしかすると日本メーカーの優秀な人たちはキャリアフリーが破壊的だと気づいていたかもしれません。だとしてもガラケーというビジネスモデルで既に確立されていたアーキテクチャ(社会・産業構造)を壊してしまうのでできない。つまり既存の顧客、株主、社員、取引先などのステークホルダーに対しコンセンサス(賛同)が取れない。だからできなかったといえます。
 このように既存のビジネスモデルで成功している大企業ほどわかっていても組織能力的にできないというジレンマに陥ります。これを専門用語でイノベーションのジレンマと言います。
 ガラケー崩壊もイノベーションのジレンマによりわかっていても早期に経営判断が出来なかったのが敗因だといえます。

破壊的イノベーションを起こすための考え方

 ここまで聞いて「破壊的イノベーションはわかった。よし、じゃあうちの会社も破壊的イノベーションを起こそう!」と意気込んできた社長さんもいるかもしれません。おそらくムリです。たまたまアイデアがバズることはあるかもしれませんが単発で終わり破壊的には程遠いでしょう。先に述べた通り昨今のイノベーションはデジタル化が絡んできます。デジタル化が絡むとより複雑化します。今やモノという概念すら変わっています。
 ここで破壊的イノベーションを起こす決定的な考え方を言うと“そもそも論”です。「そもそも今のサービスで消費者は満足なのか?そもそもこうゆう生活スタイルになったほうが今よりみんなハッピーなのではないか?」これまで当たり前のことを当たり前のようにすることが正しいとされてきた日本人にはとても敬遠されがちな考え方です。しかしそもそも論を突き詰めていくと、これから社会生活がどうあるべきかが見えてきます。つまり経営戦略上の真のビジョンが見えてくるはずです。
 そもそも論は目の前の事を否定すること(ポジティブな意味で)からはじまります。いったん全部壊して現代に最適化されるよう組み立てましょう。

破壊的イノベーションを起こすための経営

 破壊的イノベーション起こすためにはそもそも論的考え方でビジョンを提示し、それが実現できるように新規事業を開拓する。つまり既存事業と新規事業の“両利きの経営“が必要になってきます。両利きの経営とは既存事業に磨きをかけ深めていく「知の深化」と既存事業とは全く別の新規事業で新たな市場を開拓していく「知の探索」という、相反する2つの経営を同時にとっていく経営スタイルになります。
 既存事業で持続的イノベーションを起こしながらライバルに対峙ししっかり稼いでいく。一方、稼いだお金で新規事業にしっかり投資しながら破壊的イノベーションに賭けるというイメージです。
 最近では両利きの経営をとっている企業を多く見かけますが、うまくいっていない企業も多いようです。両利きの経営で失敗する多くが「知の深化」の既存事業部門と「知の探索」の新規事業部門の衝突です。知の探索は基本失敗の繰り返しです。既存事業部門からすると稼いだお金を無駄にしているように思えるのです。これは社長が戦略的ビジョンを社内に周知できていれば防げることです。「これからこんな社会が訪れるはずだからそれに向かって新しい市場を開拓して頑張っていこう」という風にお互い腹落ちしていれば失敗を繰り返しても頑張ろうとなるのです。

まとめ

 破壊的イノベーションを起こすには社長が戦略的ビジョンをしっかり示す必要があります。そうすることで会社にこれからどういう事業が必要なのかが見えてくるはずです。両利きの経営でそれらの事業を展開していきアーキテクチャ(社会・産業構造)を創り替えていけば結果、破壊的イノベーションの覇者になれるはずです。ただアーキテクチャチェンジは既存のアーキテクチャ(社会・産業構造)を創りかえることなので様々な弊害や反発は必至です。最後は社長が自身のビジョンを信じ決断できるかどうかです。

2022.10.31

 <参考>
□YouTube:GLOBIS知見録
 変化の時代に必要な「両利きの経営」ができるリーダーになるには?~経営共創基盤CEO 冨山和彦
□YouTube:IPA Channel
 講演「両利きの経営×アーキテクチャ経営=CX経営:新時代の経営リーダーシップが問われていること」(株)経営共創基盤(IGPI)CEO 冨山 和彦氏

 破壊的イノベーションについて本気で詳しく知りたい方は「イノベーションのジレンマ」と「両利きの経営」という2つの本をお勧めします。

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