【円安】円暴落で日本は貧しくなる⁉…なりません!
2022年4月24日、円相場は1ドル128円となっています。
こんにちは、世直しよっちゃんです。ウクライナ戦争以降、円安が止まりません。ニュースやネットでは悪い円安なんかと言われ、ずいぶん不安になっている方も多いのではないでしょうか。これまでは有事の円買いと言われ世界経済が不安定になったり地政学リスクが発生するとリスクオフ(リスク回避)となり決まって比較的安全資産と言われる円が買われていました。しかし今回はこれまでの法則が成り立たたず、円は売られ続けています。
目次
なぜ今回の円安は引き起こされたのか?
背景にあるのはご承知の方も多いと思いますが日米金利差と資源高です。コロナからの経済回復や資源高で米国や欧州では急速なインフレ(物価上昇)が発生してきました。インフレを抑制するため金利を引き上げる必要があったため欧米では段階的な利上げを行っています。日本ではデフレ(物価下落)脱却の為この10年間大規模な金融緩和で市中にお金を供給し続けましたがまだ物価目標の2%に達していません。ですので引き続き金融緩和を継続していくこととなり利上げを実施する計画はありません。
お金の流れは、金利が安い国の通貨から高い国の通貨へ流れるため、円の全面安となっているのです。
その日米金利差に加え、今回は戦争による資源価格の急騰が加わっています。日本は資源を輸入する国ですので、資源価格が上昇すると貿易赤字が発生してしまいます。一般的に貿易赤字の国では通貨は売られやすくなります。理由は輸入する際、相手国の通貨、もしくはドル建てで輸入品を購入しますので自国通貨を売り相手国通貨やドルを購入するからです。
円がウクライナ戦争前は110円代で推移ししていたのに今や130円に迫ろうとしています。しかし確かに円安のスピードは速いですが、暴落とまではいえません。金利差と資源高という、これまでにない局面が発生した為、ここぞとばかりに短期の売買を目的とした投機筋が一気に動き出しただけです。そもそも日本は世界一の対外純資産国でいまだに世界3位の経済大国です。簡単には貧しくなりません。
見方を変えると円高圧力も大きい
為替相場は両国間の「金利差」とその国の「経常収支」正確には貿易収支を見るのですが、実はお金の量と質も同時に見なくてはいけません。量は「マネタリーベース」、質は「購買力平価」となります。特に為替が適正水準かは両国間のマネタリーベース比を見ます。マネタリーベースとは市中に出回っているお金(流通現金)と民間銀行が中央銀行に預けているお金(日本では日銀当座預金)の合計のことです。端的に言うならば各国の中央銀行が世の中に直接的に供給しているお金のことです。この供給されているお金の比率を見るとコロナ前は円の供給量の割合が大きかったのですがコロナ以後はドルの供給量が大きく増えています。つまりお金の量で見ると円高圧力の方が強いことになります。
またお金の質を見るのは購買力平価となります。購買力平価のメカニズムは説明がややこしいのですが、ものすごく平たく言えば、価値が同じモノを両国間で購入する場合、物価が違えば、値段が変わってくるので、物価が等しくなるように為替で調整されるという市場メカニズムです。
現状日米の物価は米国が急激に高く、日本はいまだ低いままです。つまり購買力平価でみても円高ドル安の流れになるのです。
円安はどこまで進むのか?
とはいうものの現状急激な円安が進行しています。円安はどこまで進むのでしょうか?それは誰にもわかりません。っと言ってしまえば身も蓋もありませんので、あえて筆者なりの予測を立てるならば、現状の為替の水準はマネタリーベース比から見ると110円から120円と言ったところです。しかし中長期的には日米の金融政策が今のまま続けば円安傾向となりますが、今回は急に円安が進行しすぎた感があります。マネタリーベース比や購買力平価では円高圧力があることを踏まえると130円台でピークアウトし130円を行ったり来たりするのではないでしょうか。
急速な円安もいずれ一旦落ち着くため、今回の円安はほっといても問題ないというのが筆者の認識です。
ただし長期で見るならば円安傾向であることには違いなく、これは日米金利差と資源価格高騰が生んだ構造的な円安であるためズルズル円が売られ続けることに変わりありません。あまりにも行きすぎた円安はさすがに日本経済にとってマイナスに作用し始めます。
構造的な円安を打開する必要があるのも確かです。
構造的円安からの打開策は利上げしかないのか?
よく言われるのが、円が暴落して大変なことになるので欧米に追随して利上げを実施すべきだとの意見です。しかし利上げは冒頭お伝えした通り日本では物価目標2%に達していないため無理です。金融緩和を継続する必要があります。では打開策はないのかと思われますが実はあります。
為替の決定要因は先に述べたとおり、①金利差②経常収支③マネタリーベース比④購買力平価の4つの指標から判断できます。すでに③④は円高圧力が強いと述べました①はそのまま、となると必然的に②の経常収支となります。さらに詳しく言うならば市場が注視するのは経常収支の中の貿易収支です。貿易収支の黒字化で構造的円安から抜け出せる可能性が高くなります。
それができないから円売りになってるんだろ!との声が聞こえてきそうですが、日本の貿易収支が赤字に転じたのは東日本大震災後です。原発を止めざる得なく、その分、火力発電の割合を増やし海外からLNG等の化石燃料を大量に輸入するしかなかったからです。それでもここ最近貿易収支は少なからず黒字となっていました。しかしウクライナ戦争が始まってからは資源価格が急騰し、今年は間違いなく赤字です。しかも大幅に。このまま海外の資源に頼りっぱなしでは日本の貿易収支黒字化は難しくなります。さらに資源価格急騰は原材料費を輸入に頼る中小企業、ガソリン価格や電気代の高騰など家計に大きな負担になってきています。電気代の高騰だけで済めばいいのですが、最近では電力需給ひっ迫の恐れも出てきました。
今これらの問題をまとめて解決する手段があるとするならば筆者は「原発再稼働」しかないと思っています。
解決策は早期の原発再稼働
原発再稼働というと原発事故以降、再稼働に反対する声も多く中々理解を得にくいというのもわかります。しかし日本の原発の安全基準は原発事故以降、世界で最も厳しい水準となりました。厳しいというより、やりすぎなくらいまで高められました。そんな中、日本の原発は廃炉が決まったのを除くと27基が停止中で運転中は5機しかありません。政府も再稼働には前向きで、原子力規制委員会の新規制基準をクリアした原発は地元の理解が得られれば再稼働を実施していくと明言しています。問題は審査にかかる時間です。標準処理時間2年と謳っていますがあまりにも審査に時間がかかりすぎているのが現状です。安全が最優先は当然ですが、もっと効率よく進めて行けないのかと疑問に思うところもあります。
ここからは筆者のざっくりした計算になるのですが、仮に廃炉が決まっているもの以外の原発をすべて再稼働した場合、火力発電の割合は半減します。つまりLNGの輸入も半減することになります。現実的にはすべての再稼働は難しいといえますが、それでもLNGの輸入は3~4割は減らせるのではないかと筆者は考えています。
この3~4割、かなり大きいです。日本は天然ガスの輸入量が中国に次いで世界2位です。天然ガスの中のLNG輸入量は世界1位です。その日本が輸入量を大幅に減らすとなると急騰していた資源価格が一気に下落に転じる可能性がかなり高くなります。日本の輸入量年間8,000万トン、その3~4割となれば、貿易収支は3兆円程改善されるのではないか?(ざっくりした筆者の推測です)。2021年が5兆円の赤字だったので、かなり改善されることになります。それでも若干貿易赤字気味なのですが、今回の急激な円安の恩恵で輸出に関してはかなりプラスに作用するうえ、日本の原発再稼働で資源価格が下落に転じれば、トータルで見て継続的に貿易収支が黒字化していく可能性はかなり高いです。
日本の原発再稼働の大きな意味
日本の原発再稼働は貿易収支の改善、構造的円安の是正という国内の課題の他、ウクライナ戦争を止めることにかなり大きな意味を持っています。日本の輸入するLNGは天然ガス換算で年間1,100億m3、これは欧州全体がロシアからパイプラインを使って輸入している天然ガスの総量とほぼ同じです。ロシアへの経済制裁でロシアにとってかなり深刻なダメージを与えるのが天然ガスの禁輸です。しかし天然ガスの禁輸は欧州全体にとっても深刻な返り血を浴びる行為となります。天然ガスに関してはむしろ主導権はロシア側にあるともいえます。
しかしここで日本が原発再稼働でLNGを3~4割減らした場合、その分を欧州へ回すことができます。これは欧州のロシア依存を3~4割減らすことと同じでロシアにとってはかなりの圧力となります。
今やるべきことはロシアへの経済制裁を強化して1日でも早く戦争を止めることです。日本の原発再稼働は戦争を止める強力な圧力にもなるのです。
まとめ
◇円安は悪いのか?
円安自体は日本経済全体でみるとプラスの効果も大きく悪いことではない
◇何が問題?
①企業が対応できない急速な円安
②長期で見ても円安傾向という構造的円安(あまりにも円安が進むとマイナス面が大きくなる)
◇急速な円安は続くのか?
マネタリーベース比や購買力平価でみると円高圧力が強いため、急速な円安はいったん落ち着くと考えられる
◇構造的円安に対する打開策は?
原発再稼働…資源を輸入する割合を減らし貿易収支を黒字化できるため、円高圧力が高まり為替の均衡がとれる