廃棄物発電のススメ

東京都中央清掃工場
東京都中央清掃工場  画像素材:PIXTA

前回は、サーマルリカバリーについての記事を書きましが、今回はサーマルリカバリーの代表格、廃棄物発電とその可能性について解説していきたいと思います。

廃棄物発電とは

廃棄物の有効利用法にはサーマルリカバリーというものがあります。サーマルリカバリーの特徴は、廃棄物からエネルギーを回収できるという点です。最も典型的な例が、都市ごみを焼却する地域のクリーンセンターでしょう。そこでは、都市ごみを焼却し有効利用する廃棄物発電が行われています。

廃棄物発電は、都市ごみを焼却した際の、高温・高圧の蒸気でタービンを回すことで発電を行うものです。廃棄物発電の歴史は古く、戦前の1935年から存在しています。実際に普及を始めたのは技術が発展した1990年代に入ってからです。現在ではタービン材料や燃焼制御システムなどの技術革新で発電効率も以前より高まり、得られた電力は施設で利用され、余剰分は固定価格買い取り制度(FIT制度)で売電されています。都市ごみの場合、FIT制度で、バイオマス(一般廃棄物・その他)に分類されkWh17円で20年間、固定価格で売電できます。

どのくらいの電力が作れるのか

では、ここで、どのくらいの電力を生み出せるか簡単に見てみましょう。

日本の一般的な中規模なクリーンセンターでは1日200tの都市ごみを焼却できます。1日200tの施設で、焼却・発電した場合、発電効率は15%くらいでしょう。そうすると1tの都市ごみから330kWhの電力が作れます。そのうち1t処理あたり150kWhを施設内で消費するため、実質、余剰電力は180kWhとなります。つまり1日200tの施設では1日に36,000kWhを売電することができる計算になります。これは、一般家庭3,600世帯分に相当します。

特徴と課題

廃棄物発電のメリットはなんといっても、都市ごみをクリーンに処理でき、その際に電気を作り出せるところでしょう。化石燃料に頼らない、地産地消のエネルギーです。

しかし課題もあります。発電効率が低いということです。火力発電の発電効率が40%ですので、先ほど例に出した廃棄物発電の発電効率15%という数字がいかに低いかわかります。仮にこの廃棄物発電が、発電効率40%だとすると1tの都市ごみから900kWh程度の電力ができることになります。

廃棄物発電所の発電効率が低い理由は、ボイラーの蒸気温度を400℃と低めにしなければならないからです。これは、都市ごみに含まれる塩化ビニル等の塩化水素によって、ボイラ管が腐食するのを防ぐためです。しかし、根本的な理由は、自治体ごとにクリーンセンターが建設されているため、施設数が多いものの、1施設当たりの規模が小さくなり、処理できる量が少ないことにあります。日本の場合、1日の処理量100t~300tクラスがほとんどで発電効率は15%前後となります。一方、海外の廃棄物発電施設は施設数こそ少ないものの、規模はおおきく1000t以上で発電効率も20%~30%ほどもあります。

日本の発電効率の低さは問題ですが、遠くに大きな施設があるより、小さくても近くに施設があったほうが、都市ごみを収集運搬する距離が短くて済みます。地産地消の方が化石燃料削減、CO2削減効果があるのも事実です。

廃棄物発電メーカー

日本メーカーでは、日立造船とJFEエンジニアリングが有名どころでしょう。日立造船は、造船とは名ばかりで現在、船は造っていません。廃棄物発電など環境プラント事業が売り上げの半数以上を占めるプラントメーカーです。名ばかり造船の日立造船は、早くから縮小する造船産業から、廃棄物発電事業に主軸を移すなど、なかなかの先見性と思い切りの良さを感じます。日立造船は、今や2020年11月時点で国内外994の廃棄物発電施設を納入している世界トップ企業です。

さらに日立造船は2010年に大型焼却炉で世界的な受注実績を持つスイスのAE&Eイノバを買収しました。JFEエンジニアリングも、2014年にドイツの大型廃棄物発電・バイオマス発電プラントメーカーであるスタンダードケッセル・パワーシステムズを買収します。日立造船がイノバを買収したのも10年以上前になります。こうしてみるとかなり以前より日本メーカーが廃棄物発電事業に力を入れていたことが伺えます。これは欧州が埋立規制を施行したことで、焼却・熱回収への関心が高まったことと、東南アジアの経済発展を見越したものでしょう。世界的に都市ごみは埋立から焼却への兆しがあり、廃棄物発電需要が益々高まることは間違いありません。

廃棄物発電のCO2事情

都市ごみは、ただ燃やすだけならCO2が排出されます。しかし廃棄物発電により電気を作ることで、その分、売電先である地域の電力会社の火力発電所が化石燃料を使わずに済みます。そのため、環境負荷が小さい発電方法と言えます。また都市ごみ焼却時のCO2排出量は化石燃料由来のみを算定対象としているため、食物由来分やバイオマスプラスチック分も差し引かれます。年々バイオマスプラスチックが普及するに伴い、CO2排出量は減少してきています。

今後は、より環境負荷を小さくするためCO2の回収やCO2の活用など、カーボンリサイクルの導入も視野に入れる必要があります。

水素社会を見据えて

これまで、廃棄物発電の説明をしてきましたが、今後、筆者が注目しているのはガス化発電です。ガス化発電は廃棄物発電の一種ですが、発電方法に違いがあります。通常の廃棄物発電は蒸気タービンで発電します。これは焼却した際の高温・高圧の蒸気で蒸気タービンを回すものです。その為、大規模施設でないと発電効率が悪くなります。一方ガス化発電は原料を無酸素状態で、400℃~500℃で熱分解し可燃性ガスを取り出します。その可燃性ガスを1000℃前後で加熱し改質することで、合成ガスが得られ、ガスエンジンやガスタービンで発電します。

ガス化発電のガス化炉は、小型のものは電気式で大型のものは高温反応炉で熱分解・改質します。直接燃焼の蒸気タービン式と違い、ガスエンジンを使用できるため小型の施設でも発電効率が20%~30%と高いのが特徴です。さらにガス化発電は発電の代わりに、合成ガスから水素が生成できます。これから水素社会に向けて、様々な水素の調達方法が提案されていますが、有力な一つと注目しています。

まとめ

廃棄物発電は、再生材などのマテリアルリサイクルに適さないものを、クリーンに処理し有効活用できる最後の受け皿です。特に途上国のごみ問題を解決できるため、日本メーカーの海外での受注に期待が持てます。またCO2に関しては、今後カーボンリサイクルの導入も必要になってきます。

一方、ガス化発電は、小型でありながら発電と水素製造の選択性があり、水素社会の、水素サプライチェーンの一つになりうる可能性があります。国内での普及に期待したいところです。

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