トランプ関税にどう向き合うか——日本が切れる3つの外交カードと“勝たせて終わらせる”着地戦略

2025年、トランプ大統領は自動車などへの25%の関税、さらに相互関税として日本に24%の関税を課しました。日本経済は輸出依存が比較的低いとはいえ、自動車産業を中心に構造的なダメージが避けられない構図です。日本は今、感情的な反応ではなく、「設計された戦略」でこの局面に臨むべきときに来ています。

◆外交カードその一:報復関税という正面からの牽制
最も分かりやすい選択肢は、報復関税の発動です。牛肉や果物、自動車部品など、日本にとって影響が比較的小さく、アメリカ側にとって政治的に響く品目に絞って関税をかければ、一定の牽制力を持たせることができます。とくに農業ロビーの強いアメリカ国内では、こうしたメッセージは無視できない影響力を発揮します。

◆外交カードその二:米国債という金融市場への静かな圧力
次のカードは、米国債です。日本は世界最大級の米国債保有国であり、その動きは金融市場に大きな影響を与えます。実際に売却する必要はなく、保有方針の見直しを示唆するだけでも、金利上昇やドル安といった動きが起こる可能性があります。ただし、このカードは慎重に扱う必要があります。日本自身が評価損や円高リスクを被る可能性があるからです。

◆外交カードその三:対米投資という信頼関係の再考
三つ目のカードは、対米投資です。日本企業は工場建設や現地雇用を通じて、アメリカ経済に深く関与しています。この流れが止まる、あるいは減速するだけでも、地域経済や政治家への圧力となります。「日本が静かに信頼を引き揚げはじめた」というシグナルは、表面的には見えにくくとも、外交上の大きな圧力として機能するのです。

◆着地点をどう描くか:日本が主導する“勝たせて終わらせる”戦略
ただし、これらのカードは単なる報復のためではありません。重要なのは、トランプ氏が「勝利した」と感じられるような出口戦略を設計することです。たとえば、象徴的な関税調整や市場アクセスの改善を演出すれば、「アメリカの圧力が成果をもたらした」と語ることができます。実質的な譲歩は小さくとも、政治的には十分な“勝利宣言”が可能です。外交とは、実態以上に「どう納得させるか」が問われる世界でもあります。

◆対立ではなく着地をデザインする力が問われている
外交とは、ただ力を見せつけるだけでなく、対立をどう着地させるかの設計力が問われます。今回のトランプ関税への対処でも、日本は静かに力を見せながらも、争わずして勝つ構えが重要です。真の戦略とは、使わずに効かせるカードと、納得して終わらせるストーリーを持つことなのです。

2025.4.8
甘夏ニキ



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