ばらまきだけでは日本を救えない、競争力なき国の行く末
近年、日本では財政出動の是非を巡る議論が活発化しています。特に「国民が苦しいから財政出動を増やし、減税を進めるべきだ」という声は大きい。しかし、それだけで本当に日本経済は再生できるのでしょうか。短期的な景気刺激策としての財政出動は一定の効果がありますが、長期的な成長を考えた場合、それだけでは不十分です。むしろ「競争力なき国が財政を拡大し続けると、いずれ通貨価値が下落し国家そのものの存続が危ぶまれる」という危機感を持つべきです。
◆ケインズ経済学の限界
ケインズ経済学は、よく引き合いに出される理論です。ケインズは「政府が財政出動を行うことで雇用を創出し、経済を回復させる」と主張しましたが、これは労働人口が増加し、失業率が高い状況で機能する政策です。
現在の日本はどうでしょうか?失業率は歴史的に低く、むしろ労働人口の減少が問題となっています。つまり、「働き口がないから雇用を生み出すために財政出動する」という状況ではなく、「生産性の高い産業が育たなければ経済は成長しない」という段階に入っています。
◆産業競争力がなければ単なる通貨安に
財政出動は無駄ではなく、「どこに使うか」が問題なのです。単なるばらまきではなく、競争力を持つ産業を生み出し、それが持続的に成長できる環境を整えることが重要です。もし政府がどれだけお金をばらまいても日本がこのまま新たな成長産業を生み出せなければ、政府債務対GDP比がさらに悪化し続けます。その国に魅力がなければ誰が日本に投資してくれるのでしょうか?日本円離れが加速することになりかねません。日本が経済成長を持続させるには、単なる財政出動ではなく、外貨を稼ぐ力を持つ産業の育成が必要不可欠です。
◆通貨価値の安定が財政出動の源泉に
ここで重要なのは、「国民にお金を配れば経済が回る」という考え方の危うさです。確かに、人口が増加している時代なら、国民の所得を増やせば消費が拡大し、内需が成長を牽引することも可能でした。しかし、少子高齢化が進む日本では、内需だけで成長するのは不可能です。
今後、日本が生き残るためには、外需で外貨を稼ぐ産業を増やし、国際市場で戦える企業を育てる必要があります。国際競争力がある企業がどんどん生まれ、日本国内への投資が増えることで通貨の価値は維持されます。通貨価値の安定は大規模な財政出動を可能にする源泉となり結果的に社会保障費の確保など国民の生活の豊かさに繋がるのです。
◆まとめ
財政出動は必要です。しかし、それを「ばらまき」として消費に回すだけではなく、競争力のある企業を生み出し、外貨を稼ぐための投資として使うことが非常に重要となります。そうしなければ、日本は国としての価値を失いかねません。
政府の財政政策を短期的な視点で評価するのではなく、長期的にどのような影響をもたらすかを考えることが求められています。ばらまきによる一時的な景気浮揚ではなく、国際競争力を高めるための投資も同時に考えることが、日本経済の未来を決めるのです。
2025.3.4
甘夏ニキ